平成23年度 小石川中 国語の全体分析と解説
本年度は、作問上の苦労の跡はうかがえるものの、躍動感のない平板な印象である。
検査Ⅲ[2]は「石取りゲーム」をやったことのある者とそうでない者の差が出るだろう。
また〔問題1〕から〔問題2〕への壁は高く、
数的センスのある直感力の高い受検者は〔問題4〕まで到達したであろうが、
試考を繰り返し白紙で出さざるをえなかった者も多数いただろう。
触れた経験の有無や直感的偶然性に左右されるパズルゲームを出典とする出題は、
解答するための手掛かりや条件の提示に一層の丁寧な作問姿勢が求められよう。
検査Iは、これまでの小石川独特の構成を大きく転換した。
検査Ⅱの今年度の特徴は、3から4個の資料の中から選択する問題がないこと、
2年連続して出題された指数で答える問題がないことである。
一方、外国3か国の中から1つを選択させて日本と特徴を比較する傾向は変わらない。
また、前半部の割合または単位量あたりの大きさを計算で求める、
しかも桁数の大きい割り算の筆算は例年通りである。
後半のパイオニアをめざす意欲を見る問題も同様で、時事問題に日頃から関心を持ち、
今日の日本の課題を世界の動きの中で相対的にとらえ、考察して、自分なりの考えを展開できるようにしておかなければならない。
検査Ⅱの一貫した姿勢は高く評価したいが、これも来年度は検査I、Ⅲ同様に構成を変える可能性がある。
適性検査Ⅰ 試験時間45分
問題1 国語
長野まゆみ「野川」(約3500字)の「古びたネジ」がどのようなことを
喩えたものか、河井先生の話の中の言葉を用いて50から60字で答える問題
18から22年度は2種類の素材文を与え、それぞれまとめる、
もしくは共通の主題をまとめる問題であったが、今年度は長文の素材文1種類になった。
問題2 国語
傍線部について、河井先生が何のためにこのような話をしたのか、
「からため。」に続くように先生の話の中の言葉を用いて10字以内で答える問題
問題3 国語
河井先生の話と「その日の放課後」の出来事をふまえて、
分からなかった物事が分かるようになるためには何が必要か、
自身の考えを具体的な例を挙げて400から440字で書く問題
適性検査Ⅱ 試験時間45分 大問1 小問6
問題1 算数、社会
日本の農業就業者数の移り変わりを表したグラフを見て、
1965年から2005年の農業就業者数の年齢別人数の変化の特徴を、割合を求めて答える問題
農業就業者数は1/4に減少しているが、全体の変化は問われておらず、
3つの年齢帯に分けられた年齢別人数の割合の推移を答えるにとどまる。
ただし、少なくとも3桁÷3桁(被除数が2桁、1桁、各1つを含む)の割り算を6回行い%表示をすることになるが、
求める位や分数・百分率・歩合など割合表示に関する指示・条件は示されていない。
問題2(1)算数、社会
仏・伊・米・日の農業就業者数、農地面積、農作物収穫量の表を見て、
仏・伊・米から1国を選び、その国と日本について、1人あたりの農地面積と、
1人あたりの農作物収穫量をそれぞれ求める問題
1人あたりの農地面積は四捨五入して小数第1位まで、
1人あたりの農作物収穫量は四捨五入して整数で求めるように指示が異なる。
また選択する国によって被除数の有効数字が4桁と5桁の国と、同じく6桁と6桁の国があり、
除数も3桁の国と4桁の国がある。また除数が1664と同じ数字が並んでいたり、
2205と中に0をはさんであったりして、芸が細かい。
間違えずに計算しやすい国を選択する判断力も求められよう。
なお、652286000トン÷2205000人を0をつけたまま筆算するのではなく、
除数・被除数をそれぞれ1000で割って計算処理する技能も求められよう。
問題2(2) 社会
選んだ国と日本を比較して、農業就業者1人あたりの農地面積と農作物収穫量の特徴を、
(1)で求めた数値を使って答える問題
「(1)で求めた数値を使って」の意味が「差」ではなく「割合」表示となることに注意。
問題3(1)算数、社会
仏・伊・米・日の米と小麦の収穫量と収穫面積の2つの資料を見て、
仏・伊・米から1国を選び、米、小麦について、
選んだ国と日本の収穫量は農地1m2あたりそれぞれ何kgになるか求め、求めた数値を使って棒グラフを作成する問題
解答用紙の棒グラフの縦軸の目盛りは白紙で、自分が計算した数値に対応して記入するものである。
表の数字の単位はトンとヘクタールだが、計算で求める単位はkg/m2である。
まともに計算するとアメリカの場合11桁÷12桁となる。
3つの国の中からどの国を選択するかとともに、計算処理の技術上の工夫ができたかどうかは、処理スピードに影響を与えうる。
ちなみに上から3桁の概数で計算しても答えの数値に変わりはない。
問題3(2) 算数
選んだ国と日本を比較して、米と麦の農地1m2あたりの収穫量の特徴を、(1)で求めた数値を使って答える問題
問題4 社会
別の2つの資料を見て、仏・伊・米の中から1つの国を選び、
その国と日本を比較して、農業就業者1人あたりの農業用トラクター数、100haあたりの農業就業者数、
1haあたりの肥料消費量、1haあたりの穀物収穫量の特徴について、具体的な数値を使って答える問題
2国間のそれぞれの値と前者2数、後者2量の分布グラフは資料として提供されている。
従って「具体的な数値を使って」とは、
2国間の数量の比較を「から倍」または「何分のいくつ」の割合表示することを求めている。
今後は割合を比で表示することを求めてくる可能性があるだろう。
問題5 総合、社会
「農業や農村の役割」9項目についての資料を読み、これまでの6つの資料も参考にして、
これから日本の農業をどのように発展させていったらよいと思うか、考えを140から160字で書く問題
問題4までのような資料の読み取りではなく、
世界に目を向けた中での日本の農業の発展について「(パイオニアを目指す)あなたの考え」を求めている。
問題6 総合、社会
ケニアで活躍する日本人の資料とケニア農業者が作成した資料、および会話文を読んで、
農業に関連したことで将来やってみたいと思うことを、理由も含めて120から140字で書く問題
適性検査Ⅲ 試験時間45分 大問2 小問9
[1]冷蔵庫
問題1 理科
牛乳の乳酸菌によってヨーグルトになるということをもとにして、
「増える」こと以外の生き物の性質を確かめる場合、①どのような実験が考えられるか、
②どのような結果になるか、理由も説明する問題
「生き物の性質」について、会話の中の(細菌が)「私たちと同じ生き物なら、性質も同じ」という表現から、
呼吸や生存に適する温度などを思い浮かべることができたか。3
年間出題されていた実験方法考案問題と似ているが、非なるものである。
厳密な科学的考察を問うものではなく、これまで培った学習知識を動員して活用をはかる力をみるものである。
問題2(1)理科、算数
乳酸菌は40℃に保っておくと、30分毎に数が2倍に増加するとすると、①1時間後から5時間後まで、
30分毎に乳酸菌の数は最初の数の何倍になるか表に記入した上で、
②そのうちの最初から3時間後までを折れ線グラフにする問題
結果は、公比が2の等比数列であり、グラフは指数関数となるが、高校数学の知識・技能を求めるものではない。
問題2(2)理科、算数
乳酸菌は40℃に保っておくと、30分毎に数が2倍に増加するとすると、①5時間には最初の数のおよそ何倍になるか、
上から2桁の概数で答え、②15時間後には最初の数のおよそ何倍になるか求める問題
(3)に誘導するために作られた小問である。
しかし、1024を「上から2けたの概数にして1000」と答える問題には児童は慣れておらず、
おっかなびっくり自信なげに解答したのではないか。
問題2(3)理科、算数
初めに乳酸菌が10000個あったとすると、初めから30時間後までの数の変化について、
その桁数を5時間毎に求め、折れ線グラフにする問題 検査IIの1問題3(1)と異なり、
折れ線グラフの縦軸と横軸の目盛りの数字は解答用紙に印刷されている。
問題2(4)理科、算数
乳酸菌1個を縦・横・高さ0.001mmの立方体として、①同じ割合で増えたとき、
10000個の乳酸菌の体積は20時間後何mm3になるかを1つの式で表し、
②答えは何リットルになるかを求める問題
①では答えがmm3の単位になる「1つの式」を書くだけ。
当然「20」という数字は使用しない。児童は問題文に出ている数字を使わないことに不安になる。
①の問題文に、1000mm3=1cm3は書いてあるが、②に1000cm3=1リットルは書いていない。
問題3 理科、家庭科
ヨーグルトに入っている乳酸菌の実際の大きさも増える速さも問題2で考えたものとほぼ同じで、
数は1mm3中に10000個以上あるが、現実には問題2(4)で考えた結果にならない理由を説明し、
1リットルの牛乳から実際にできるヨーグルトのおよその量をリットルの単位で答える問題
計算上の理論的な結果と現実世界のギャップをどのように理解し解決を図るかを問う良問
問題4 理科、家庭科
問題冒頭に、熱湯につけておいたスプーンで手づくりのヨーグルトをすくったとあるが、
スプーンを熱湯につけておく理由を考えて説明する問題
身近な事象への科学的な興味・関心の程度をみようとしている。
問題5 理科、家庭科
缶詰、梅干し、ジャム、乾パンなど、腐りにくくするために工
夫がされている食品を1つ選び、腐りにくくなる理由を説明する問題
[2] 石取りゲーム
問題1(1)算数、総合
ゲームの進め方のルール①②③に従って、10個の小石を先手が最初に何
個か取れば、後手がどう取っても先手が勝つようにするときの最初の個数を答える問題
(1)のヒントが(2)の「6個」になっており、「6個」残る状態を作り出せば先手が勝つ。
問題1(2)算数、総合
最初にある小石が6個以外で、先手がどう取っても後手が必ず勝つ場合、
最初にある小石の個数の例を1つ答える問題
(2)の後手が(1)の先手の状態を作り出せばよい。
つまり、先手と後手が1回ずつ取り合った後に「6個」残るようにする。
問題2 算数、総合
ゲームの進め方のルールに④を追加して、2皿にそれぞれ10個ずつ小石を置いた場合、
先手がどう取っても後手が必ず勝つことができる取り方を考え、説明する問題
問題3 算数、総合
20個の小石を3皿に分け、①から④のルールでゲームをするとき、
(1)先手の取り方にかかわらず、後手が必ず勝てるようにするための最初の小石の分け方を考え、
3枚の皿それぞれに置く小石の数を書き、(2)その場合に後手が必ず勝つための取り方を説明する問題
問題4 総合
ゲームの進め方のルール①から④のうち1つを変えてゲームを面白くするとすると、
あなたはどのルールをどのように変えるのか答え、そのように変えたほうが面白いと考える理由を書く問題
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