女性問題とは、女性に対する差別、抑圧、暴力などの様々な問題の総称です。
世界中では、貧富や人種や文化の違いにかかわりなく、また平和なときでも紛争のときでも、国家、地域社会、そして家庭の中で、女性は絶えず差別や暴力に直面しています。
家庭内暴力、「名誉殺人」(女性が、家族が決めた相手以外と結婚したり、未婚で男性と関係を持ったときなどに「一家の名誉が汚された」として、家族が娘を殺害する慣習)、紛争下における強姦など性暴力・・・。
女性への暴力は、性差別に深く根ざしています。
これは、私たちの社会が、女性が男性と平等であることを否定していることによって支えられています。
女性差別撤廃宣言( 1979年国連第 34回総会で採択)は、
「女性への暴力は、女性が男性に比べて従属的地位に置かれることを強いる重大な社会的構造の一つである」と明記しています。
女性への暴力が続く大きな要因の一つは、世界的にみても加害者に対する免責(普通なら負うべき責任を問わずに許すこと)がはびこっていることです。
例えば、ハンガリーでは、性犯罪の加害者の3分の2は被害者の知り合いですが、加害者が裁かれることはほとんどありません。
ナイジェリアでは、警察や治安部隊による強姦事件が横行しています。
しかしここでも、加害者を裁くことがまったくできていません。
日本では、法制度上は男女平等が浸透しつつありますが、実生活では性別分業の意識が根強く、女性たちはいまだ様々な困難を抱えています。
例えば、育児休業制度(通称、育休)が法制化されていても、その十分な利用を妨げるような職場の雰囲気があることはよく知られています。
私たちは、「制度上の平等」だけでなく、「事実上の平等」という視点から、女性問題を考え直す必要があるでしょう。
現在の日本において、急務の課題として浮かび上がってきた高齢化や少子化などの問題が、女性問題と非常に密接な関連があります。
これまで、「女性問題」は、しばしば「女性の社会進出」を意味して来ました。
しかし、最近では女性が家庭の外で働くようになっても男性の意識が変わらず、家事は依然として女性が担っているという問題が生じています。
高齢者の介護の問題や子どもをめぐる問題の解決には、母親・父親の役割の見直しも必要であり、さらに、個々の家族だけでなく、地域社会や企業の関与と支援の重要性が注目されています。
また、リストラをはじめとする経済の変化は、従来のような男性たちも急激な社会変化の中でこれまでの固定的な役割分担や生活スタイルを見直し、いかにして家庭・職場・地域社会のそれぞれに関わりながら生活していくかが、問われるようになってきています。
これまで伝えてきたことをまとめると、「女性問題」とは女性だけの問題ではなく、むしろ男性も含めた社会全体が取り組まなければならない課題と言えるでしょう。
最後に、みなさんにとって身近な例として学校の例を挙げてみます。
世界には、何らかの理由で学校に通えない子どもがたくさんいます。
ただ、その数は女の子の方が圧倒的に多くなっています。
それはなぜでしょう?
すでに述べたように、世界の多くの社会には男女の役割を分ける伝統的な慣習や、男女の差別が残っています。
女の子は早く結婚して家の中のことを するものだとか、家事をする女の子に学校の勉強は役に立たないという考え方が残っているのです。
貧しさも大きな原因です。
兄弟すべてを学校に通わせる お金がなければ、男の子が優先されることが多くなります。女
の子の多くが家族の生活のために働きに出されたりしています。
そのほかに、学校に女の子用のトイレがなかったり、女の子が差別を受けたりするなど、女の子が通いやすい学校がない場合があります。
また、学校が遠く、通学路が危険だと、親は心配して 女の子を学校に行かせないという理由もあります。
☆ここで考えられる人権問題
女の子
・学校に行きたくても行かせてもらえない
・生活のために働き手にされてしまう
・結婚のために必要なことしかさせてもらえない(=結婚しなければならない)←選択の自由がない
・能力を発揮する機会が与えられない
・勉強ができないので貧しさから逃れられない
・読み書きなどができず、一生誰かに生活面で依存しなくてはならない
など
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